日本も加盟しているWHOの「タバコ規制枠組み条約」では、「2010年2月までにすべての公共の建物内の完全禁煙」をガイドライン(指針)としています。子ども、家族、自分、大切な人がタバコの被害を受けない社会作りが必要だと思います。
動画CMコンテスト受賞作品(NPO法人日本禁煙学会)
税収vs健康 ― たばこ規制はどこまで広がるか?
[たばこ規制についての基礎知識][基礎知識]税収vs健康 ― たばこ規制はどこまで広がるか?
【日本の論点PULS】
http://www.bitway.ne.jp/bunshun/ronten/ocn/sample/ron/09/077/r09077DFA1.html
タスポの導入
二〇〇八年三月から順次運用を始めてきた、未成年の喫煙防止強化のための「成人識別たばこ自動販売機」が、七月から全国で稼働を開始した。この販売機でたばこを購入するには、成人の証である「taspo(タスポ)カード」が必要だ。Taspoとは、「たばこ+パスポート」からできた造語。 成人識別ができる自販機としては、ほかに運転免許証をかざすタイプや、顔を認識して成人か否かを類推するタイプも認められている。しかしたばこ自販機の九割以上がタスポカード対応型のため、事実上カードがないと自販機でたばこを購入できない。
タスポ誕生の背景には、日本も署名している「たばこ規制枠組み約」がある。この条約締約国の義務として、未成年者の喫煙防止対策を促進させることが要求されている。これを受けて、「社団法人日本たばこ協会」「全国たばこ販売協同組合連合会」「日本自動販売機工業会」が主体となって、タスポ導入に取り組んできたのである。
普及が進まないタスポカード
六月三〇日に日本たばこ協会が発表したタスポ発行枚数は、約六四一万枚。喫煙者は約二六〇〇万人と推定されているので、四人に一人しかカードをもっていないことになる。
大きな理由は、カード取得が面倒なことだ。あらかじめ申込書に記入捺印し、顔写真や免許証などの本人確認書類のコピーを添付して郵送しなくてはならない。
カードをもたない喫煙者が多いため、たばこを販売するコンビニは売上が急激にアップし、「タスポ特需」などといわれた。一方、カードの貸し借りが横行し、カードをもたない人へのサービス(?)として、自販機にカードをぶら下げているケースまで現れた。
毎年一万件程度が廃業している中小のたばこ販売業者は、コンビニに客をとられてさらに追い込まれた。そこで全国たばこ販売協同組合連合会は、なんとか自販機離れをくい止めようと、未成年のたばこ購入防止のために自粛してきた深夜の自販機販売を、八月から一二年ぶりに復活させた。
カードを作れない高校生がコンビニでたばこを万引きするなど、さまざまな騒ぎはあったものの、日本たばこ協会によると、八月一六日現在のタスポ発行枚数は約七八七万枚に上昇、保有率は三〇%にアップした。しかも、喫煙者のうち常時自販機を利用する人にかぎれば、保有率は八三%に達しているという。
たばこが一箱一〇〇〇円に?
タスポ騒ぎに乗じて火がついたのが、「たばこ一〇〇〇円」論争である。火付け役は、日本財団の笹川陽平会長。〇八年三月からインターネットのブログなどで、たばこ一箱の値段を平均一〇〇〇円に値上げすることを提唱していた。氏の論はこうだ。〔たばこ一箱を現行の平均三〇〇円から平均一〇〇〇円にすると、九兆五〇〇〇億円のたばこ税の税収増が見込める。値上げで禁煙する人も増えるだろうが、仮に消費量が三分の一に減ったとしても、税収増は三兆円超。また禁煙する人が増え、健康被害が減って医療費が抑えられる〕
三兆円もの税収増予測は、政府にとってじつに魅力的だ。超党派の「禁煙推進議員連盟」は、早速値上げの勉強会を開き、自民党税制調査会も、たばこ増税の検討を表明し、値上げ実現へ動き出した。
禁煙推進派も、もちろん賛成だ。日本禁煙学会の作田学理事長は、〈値段を少しでも上げると、喫煙率が下がることは世界各国で実証されている〉として値上げ案を歓迎する。ただ、税収増を基礎年金に充てるのではなく、〈葉たばこ農家の転作支援やたばこ小売店の転業対策、禁煙教育に充てるべきだ〉と主張する(東京新聞〇八年七月一日付)。
税収増はほんとうか
たばこ値上げ案には、当然ながら反発も大きい。ジャーナリストの斎藤貴男氏は、〈健康を害して高い医療費がかかるから高い税金を払えというのは、後期高齢者医療制度と同じ論法。世の中はお互いさまなのに人の生き方や好みを監視し排除するのはおかしい〉と批判する(朝日新聞〇八年五月三一日付)。
もちろん日本たばこ産業(JT)は猛反発。木村宏社長は、大増税に踏み切れば九割以上消費量が減るかもしれないと危惧し、〈たばこが税を負担する能力は限界に来ており『捕らぬたぬきの皮算用』だ。福祉のための持続可能な財源にはふさわしくない〉と怒る(産経新聞〇八年七月一二日付)。
消費量九割減とまでいかなくても、禁煙する人が増えて、三兆円の税収増は見込めないのではないかと疑問視する声も多い。
日本経済新聞の調査では、一箱一〇〇〇円になったら、七五%が禁煙する、あるいはその努力をすると答えている。製薬会社ファイザーの調査でも、禁煙するという人が七九%だった。この数字を元に、かえって税収減になる可能性を指摘するのは、経済アナリストの森永卓郎氏である。
たばこ一箱に七〇〇円増税して一〇〇〇円にすると、税収は二五〇〇億円増える。しかし、たばこ小売店に入る利益が現状と同じ販売価格の一〇%とすれば、税収増はほとんどなくなる。さらにたばこ消費量が五分の一になるので、たばこ産業の国内生産額一兆円のうち八割が失われ、経済的損失は八〇〇〇億円。そのうち一割が税金にはね返るとすると、税収減は八〇〇億円に達するというのだ(朝日新聞〇八年六月二六日付)。
たばこ規制条例は実現するか
「健康増進法」では、受動喫煙の防止を明記しているが、努力義務にすぎない。そのため、国のたばこ規制は生ぬるいと、地方自治体で独自に規制しようとする動きがでてきた。神奈川県では、飲食店やパチンコ屋などの娯楽施設を含めた公共の屋内をすべて禁煙または分煙にする、罰則付きの「受動喫煙防止条例」骨子案を県議会に提出した。
松沢成文神奈川県知事は、〈税収と県民の健康どちらを取るかと問われれば、私は県民の健康を優先する〉(読売新聞〇八年七月八日付)ときっぱり語り、完全分煙しようとすれば設備投資が必要になるから、禁煙にしたほうがいいとしていた。しかし、業界団体の反発に譲歩するかたちで骨子案を改め、飲食・娯楽店等では分煙も選択できるようにした。ただし、学校や病院、官公庁などでは禁煙が義務付けられることになる。
東京都千代田区から全国的に広がってきた、路上喫煙禁止条例の前例はあるが、屋内の喫煙を規制する条例ははじめてだ。
図表 紙巻きたばこ1箱(20本)の価格
【日本の論点PULS】
http://www.bitway.ne.jp/bunshun/ronten/ocn/sample/ron/09/077/r09077DFA1.html
タスポの導入
二〇〇八年三月から順次運用を始めてきた、未成年の喫煙防止強化のための「成人識別たばこ自動販売機」が、七月から全国で稼働を開始した。この販売機でたばこを購入するには、成人の証である「taspo(タスポ)カード」が必要だ。Taspoとは、「たばこ+パスポート」からできた造語。 成人識別ができる自販機としては、ほかに運転免許証をかざすタイプや、顔を認識して成人か否かを類推するタイプも認められている。しかしたばこ自販機の九割以上がタスポカード対応型のため、事実上カードがないと自販機でたばこを購入できない。
タスポ誕生の背景には、日本も署名している「たばこ規制枠組み約」がある。この条約締約国の義務として、未成年者の喫煙防止対策を促進させることが要求されている。これを受けて、「社団法人日本たばこ協会」「全国たばこ販売協同組合連合会」「日本自動販売機工業会」が主体となって、タスポ導入に取り組んできたのである。
普及が進まないタスポカード
六月三〇日に日本たばこ協会が発表したタスポ発行枚数は、約六四一万枚。喫煙者は約二六〇〇万人と推定されているので、四人に一人しかカードをもっていないことになる。
大きな理由は、カード取得が面倒なことだ。あらかじめ申込書に記入捺印し、顔写真や免許証などの本人確認書類のコピーを添付して郵送しなくてはならない。
カードをもたない喫煙者が多いため、たばこを販売するコンビニは売上が急激にアップし、「タスポ特需」などといわれた。一方、カードの貸し借りが横行し、カードをもたない人へのサービス(?)として、自販機にカードをぶら下げているケースまで現れた。
毎年一万件程度が廃業している中小のたばこ販売業者は、コンビニに客をとられてさらに追い込まれた。そこで全国たばこ販売協同組合連合会は、なんとか自販機離れをくい止めようと、未成年のたばこ購入防止のために自粛してきた深夜の自販機販売を、八月から一二年ぶりに復活させた。
カードを作れない高校生がコンビニでたばこを万引きするなど、さまざまな騒ぎはあったものの、日本たばこ協会によると、八月一六日現在のタスポ発行枚数は約七八七万枚に上昇、保有率は三〇%にアップした。しかも、喫煙者のうち常時自販機を利用する人にかぎれば、保有率は八三%に達しているという。
たばこが一箱一〇〇〇円に?
タスポ騒ぎに乗じて火がついたのが、「たばこ一〇〇〇円」論争である。火付け役は、日本財団の笹川陽平会長。〇八年三月からインターネットのブログなどで、たばこ一箱の値段を平均一〇〇〇円に値上げすることを提唱していた。氏の論はこうだ。〔たばこ一箱を現行の平均三〇〇円から平均一〇〇〇円にすると、九兆五〇〇〇億円のたばこ税の税収増が見込める。値上げで禁煙する人も増えるだろうが、仮に消費量が三分の一に減ったとしても、税収増は三兆円超。また禁煙する人が増え、健康被害が減って医療費が抑えられる〕
三兆円もの税収増予測は、政府にとってじつに魅力的だ。超党派の「禁煙推進議員連盟」は、早速値上げの勉強会を開き、自民党税制調査会も、たばこ増税の検討を表明し、値上げ実現へ動き出した。
禁煙推進派も、もちろん賛成だ。日本禁煙学会の作田学理事長は、〈値段を少しでも上げると、喫煙率が下がることは世界各国で実証されている〉として値上げ案を歓迎する。ただ、税収増を基礎年金に充てるのではなく、〈葉たばこ農家の転作支援やたばこ小売店の転業対策、禁煙教育に充てるべきだ〉と主張する(東京新聞〇八年七月一日付)。
税収増はほんとうか
たばこ値上げ案には、当然ながら反発も大きい。ジャーナリストの斎藤貴男氏は、〈健康を害して高い医療費がかかるから高い税金を払えというのは、後期高齢者医療制度と同じ論法。世の中はお互いさまなのに人の生き方や好みを監視し排除するのはおかしい〉と批判する(朝日新聞〇八年五月三一日付)。
もちろん日本たばこ産業(JT)は猛反発。木村宏社長は、大増税に踏み切れば九割以上消費量が減るかもしれないと危惧し、〈たばこが税を負担する能力は限界に来ており『捕らぬたぬきの皮算用』だ。福祉のための持続可能な財源にはふさわしくない〉と怒る(産経新聞〇八年七月一二日付)。
消費量九割減とまでいかなくても、禁煙する人が増えて、三兆円の税収増は見込めないのではないかと疑問視する声も多い。
日本経済新聞の調査では、一箱一〇〇〇円になったら、七五%が禁煙する、あるいはその努力をすると答えている。製薬会社ファイザーの調査でも、禁煙するという人が七九%だった。この数字を元に、かえって税収減になる可能性を指摘するのは、経済アナリストの森永卓郎氏である。
たばこ一箱に七〇〇円増税して一〇〇〇円にすると、税収は二五〇〇億円増える。しかし、たばこ小売店に入る利益が現状と同じ販売価格の一〇%とすれば、税収増はほとんどなくなる。さらにたばこ消費量が五分の一になるので、たばこ産業の国内生産額一兆円のうち八割が失われ、経済的損失は八〇〇〇億円。そのうち一割が税金にはね返るとすると、税収減は八〇〇億円に達するというのだ(朝日新聞〇八年六月二六日付)。
たばこ規制条例は実現するか
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松沢成文神奈川県知事は、〈税収と県民の健康どちらを取るかと問われれば、私は県民の健康を優先する〉(読売新聞〇八年七月八日付)ときっぱり語り、完全分煙しようとすれば設備投資が必要になるから、禁煙にしたほうがいいとしていた。しかし、業界団体の反発に譲歩するかたちで骨子案を改め、飲食・娯楽店等では分煙も選択できるようにした。ただし、学校や病院、官公庁などでは禁煙が義務付けられることになる。
東京都千代田区から全国的に広がってきた、路上喫煙禁止条例の前例はあるが、屋内の喫煙を規制する条例ははじめてだ。
図表 紙巻きたばこ1箱(20本)の価格
タグ :日本の論点PULS
●喫煙者率、過去最低、海外では「たばこ休憩禁止」の動きも
●喫煙率の目標 個人の健康後押しする観点で/社説
●埼玉/ 受動喫煙
●社説:たばこ税 健康のために禁煙策を
◎【社説】受動喫煙/職場の防止に対策強化を
◎【あなたの処方せん:新禁煙事情1~3】
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2010年03月05日 Posted bytonton at 19:10 │Comments(0) │●コラム・投稿・社説
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